装着型サイボーグ“HAL”

SBMA (球脊髄性筋萎縮症)を50代で発症したTさん

突然の発症

私は、兼業農家で、その日は休みを利用して田んぼに入り、肥料を撒いていました。中央付近まで進んだところで、突然足に力が入らなくなり泥の中で溺れかけた私を、救急隊員の方が助けてくださいました。

その後、普通に生活していたつもりでしたが、また同じことが起きてしまい、二度までも周囲にかけた迷惑から情けない気持ちでいっぱいでした。

 

精密検査を受け、先生から難病だと言われてもただ驚くばかりで、とても自分のことには思えませんでした。

当初ALSと診断されましたが、大方の予想に反して進行がとても遅く、途中でSBMAだとわかりました。

 

できないことが増えていく

しばらくは、手すりか杖があれば自分のことはできる状況でしたが、怖いのは、突然足に力が入らなくなり転ぶことです。眼鏡を何個もダメにしました。流石に車の免許を返納した時は寂しかったですね。電動カートがマイカーになり、それで愛犬の散歩に出かけるのが何よりの気分転換になりました。

 

立ち座りも困難になる頃には、車椅子で過ごすことが多くなり、妻の手を借りないとトイレにも行けなくなりました。ますます足の踏ん張りが効かなくなり、私のズボンを手操って移乗させる妻の手に力が掛かりすぎ、ひびが裂け絆創膏だらけだったのを覚えています。

訪問入浴のお世話になったり、妻を休ませるためにデイサービスに通ったりもしましたが、なかなか馴染めず家にいることを望みました。

 

HALとの出会い

そんな時です。担当の先生から、ロボットを着けて行う治験(*)があることを聞いて参加してみることにしたんです。HALと呼ばれるそのロボットは不思議でした。力が入らなくなった私の足の代わりに、丈夫な骨格とモーターが備わっていて、動かそうと力を込めた部分が「ここだよ」って反応し、外側から包み支えて動かしてくれるような感じです。

 

何十年かぶりに自分の意思で立ち上がり、一歩を踏む出した瞬間は嬉しかったですね。薬にも勝るとはこのことでしょう。笑いが止まりませんでした。私以上に妻が喜んでいて、それもそのはずです。何十年もただ悪くなっていく様子を見続けてきたのですから。

 

メッセージ

私たちのような進行性の難病は、だんだん自由の効かなくなる体と折り合いをつけながら生活をしていくしかありません。治すために頑張ることもできず、将来に絶望したりすることもあるでしょう。

 

私の場合は、病気が進行した晩年にHALと出会ったわけですが、この手記を手にとって下さっているあなたには、筋力の低下を感じた適切な時期からHALを使い、なるべく長く今の身体機能を維持して人生を楽しんでいただきたいと心から願っています。

 


 

(*)希少性神経・筋難病の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等でで随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験

Nakajima T, Sankai Y, et al. Orphanet J Rare Dis 16.304(2021)

注意事項

当サイトは、装着型サイボーグHALによる治療を受けられる方、およびご家族の方向けに情報を掲載しています。
医学的な判断、アドバイスを提供するものではないことをご了承ください。
HALの治療を受けるに当たっては、医師の指示に従ってください。

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